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管理栄養士が解説!家庭で気をつけるべき食中毒対策のポイント

気温や湿度が高くなってくるこの時期に心配なのが食中毒です。家族にも安心・安全な美味しい食事を食べてもらいたいですよね。家庭内では、どのようなことに気をつけたら良いのでしょうか。加熱しておけば大丈夫!と思っている方も多いのでは……?
しかし、実際は家庭内でもたびたび発生しています。実は食中毒の原因菌それぞれの特徴に合わせた対策が必要なのです。ここでは特に注意したい食中毒対策のポイントをご紹介します!

夏に怖い食中毒とは

夏は家族や友人とBBQやおうちカフェなどを楽しむ方も多いのではないでしょうか。夏休みも重なるのでお子さんと料理をする機会も増えるでしょう。楽しい時間が食中毒で悲しい思い出にならないように、しっかり対策を取ることが大切です。

食中毒予防は「とりあえず加熱して冷蔵すれば大丈夫!」と思っている方も多いと思います。もちろん加熱すれば死滅する細菌もいますが、実は「加熱しても死なない」、「冷蔵庫で増える」細菌がいるのです。

そこで夏に注意したい食中毒について3つご紹介します。

BBQ・焼肉で要注意!食肉での食中毒「カンピロバクター」

症状:下痢や嘔吐
対策:食材の中心部までしっかり加熱
注意したい食材:刺身やたたきなど、火が十分に通っていない状態の肉

これらの特徴は、よくニュースで聞くO157、サルモネラなども該当します。感染を防ぐためには、生焼けの部分が無いよう十分に加熱することが大切です。また、お肉を焼くときは必ず生肉用と食事用とで食器や調理器具を分けて使用してください。

近年、飲食店や学校の調理実習等でカンピロバクター食中毒が増加していますが、十分な加熱調理と二次汚染防止を徹底すれば比較的容易に防げます。食中毒防止のポイントを押さえて、美味しく安全に食事をしましょう。

2日目カレーに要注意!「ウェルシュ菌・セレウス菌」

症状:腹痛と下痢
対策:料理を鍋に入れたまま放置せず、作り置きは小分けにして速やかに冷やす
食材:カレーなどの煮込み料理、チャーハンやパスタなどの米・小麦料理

ウェルシュ菌もセレウス菌も熱に強い細菌です。菌そのものは加熱処理によって死滅しますが、芽胞という殻のようなものを作る性質があります。これは非常に耐熱性が高く、高温で長時間加熱しても芽胞は生き残るのです。

また、ウェルシュ菌は空気(酸素)を嫌うという特徴もあります。煮込み料理を寸胴鍋で作ると鍋底の酸素濃度が低くなるため、菌にとって増殖しやすい状態に……。調理後は小分けにして冷蔵・冷凍するなど、保存の仕方には注意が必要です。

コクが増す2日目のカレーは美味しいですが、安全に食べるためには適切な保存管理が欠かせません。食べる際にはよくかき混ぜながらきちんと再加熱することも忘れないでください。

冷蔵庫でも増える!おしゃれなあの食材が食中毒の原因に!?「リステリア菌」

症状:発熱・筋肉痛など(他の感染症と区別が難しい場合も)
対策:十分に加熱してから食べる、早く食べる
食材:加熱せずにそのまま食べる食品(加熱殺菌していないナチュラルチーズや生ハムなど)

リステリア菌は他の食中毒菌と同様に加熱により死滅しますが、4℃以下の低温や12%以下の食塩濃度でも増殖できる点が特徴です。海外では、未殺菌乳から作られたチーズを始めとする乳製品、野菜サラダ、加熱不足の食肉、魚介類など調理済みの食品でのリステリア食中毒が多数報告されています。

日本では、リステリア感染症の集団発生事例があり、原因はナチュラルチーズでした。特に感染しやすい妊婦や高齢者は、ナチュラルチーズなどの殺菌していない乳製品や生ハム、ミートパテなど調理済み食肉加工品の飲食には注意が必要です。

このように、冷蔵庫で長期間保存されるうちに増殖する菌もいます。加熱せずにそのまま食べられる食品も食中毒の原因となり得るので気をつけなければいけません。

このような情報を正しく知っておくことで、自分自身と周りの人の健康を守ることが期待できます。適切な食中毒対策をして、美味しく安全な食生活を送りましょう。

食中毒を予防するには

食中毒の三原則「細菌を付けない、増やさない、やっつける」に焦点を当て、購入時から保存方法について一連の流れでお伝えいたします。食中毒対策の基本を一つずつ確認していきましょう。

細菌を付けない

一つ目の「細菌を付けない」とは、食中毒の原因となる細菌やウイルスなどを食品や調理器具に付けないこと。食中毒予防において最も重要なポイントです。  

そのためには調理器具を清潔に保つことが大切になります。菌の付いた食品から他の食品への二次感染を防ぐために、使った包丁やまな板はこまめに水で流して乾いたふきんで拭き、ふきんは頻繁に水洗いするように意識しましょう。

また、手洗いも食中毒対策では重要なことです。「そんなに汚れていないから」、「さっき洗ったから」と手洗いが流れ作業となり、ささっと終わらせてはいないでしょうか。正しい手洗い方法についてご紹介するので、今一度手洗いの仕方を確認してみてください。

①流水で手を洗います。
②石鹼をつけてしっかり泡立てて、手を組むようにして指の細かい部分まで洗います。ここでは親指・手首はねじるようにして、爪の間や指先、手首もしっかりと。
③流水でしっかりと泡を流します。
④清潔な乾いたタオルで水分を拭き取ります。

手洗いで洗い残しの多い部分は指先、手のひらのしわ、親指の付け根・膨らみ、手首、爪と皮膚の間・甘皮の部分の5か所です。これらの部分は念入りに洗うよう心がけましょう。

関連:厚生労働省「食中毒予防のための衛生的な手洗いについて」(pdf)

細菌を増やさない

二つ目の「増やさない」では、当たり前ですが冷蔵庫や冷凍庫で保存するのが重要になります。多くの細菌は高温多湿で増殖が活発になり、10℃以下では増殖が緩やかに、-15度以下で増殖が停止するからです。しかし、この時期は屋内も高温多湿になりがち。そのため、夏場は冷蔵庫内の温度も上がりやすくなっています。いつも以上に冷蔵庫の扉の頻繁な開閉、食品の詰め込み過ぎは避けてください。

また、冷蔵庫に入れてもゆっくりと細菌は増殖するため、買ってきた食材や調理後のおかずなどはなるべく早めに食べるようにしましょう。

細菌をやっつける

三つ目の「やっつける」では、十分な加熱処理がポイントです。表面だけでなく中心部までしっかり加熱しましょう。肉や魚だけでなく、野菜もなるべく火を通してから食べると良いですね。また、調理器具も熱湯消毒してから使用することをおすすめします。そして肉や魚、卵を使った後は必ず洗剤でよく洗ってください。もし家にあれば、台所用殺菌剤を使うのも効果的です。

日常生活でできる食中毒対策とは

この時期は35℃を超える猛暑日も珍しくありません。スーパーで買い物をして家に着くまでの間に菌が増殖する恐れがあります。そのため肉や魚はそれぞれ分けて包み、保冷剤と一緒に持って帰りましょう。帰宅後はすぐに冷蔵庫へ保管します。この時、魚や肉の汁がこぼれないよう注意が必要です。細菌を含む汁が他の食品にかかると、そこから汚染する可能性があります。

また、調理後はできるだけ早く食べることが大切です。それから、調理前だけでなく食事をする際にも手洗いを心がけましょう。残った食品は清潔な容器に保存し、早めに食べきってください。時間が経っていたり、色や匂いが変わっていたり、少しでも怪しいと思ったら思い切って捨てることも必要な決断です。

そして気をつけたいのが夏場のお弁当。生野菜・果物は水気が多いのに加え、時間が経つと中の水分がどんどん出て、食中毒菌が繁殖しやすい環境を作ってしまいます。また、半熟卵はとろっとした黄身が美味しいですが、完全に火の通っていない卵は食中毒の原因になるサルモネラ属菌が付着・繁殖しやすいです。卵をおかずに使用する場合は、中までしっかりと火を通すように意識しましょう。

その他にも、煮物は汁気が多いので避けた方が無難です。特にじゃがいもや里芋などの芋類は、デンプンが多く傷みやすいので夏のお弁当には適しません。たくさんの具材が入った混ぜご飯も傷みやすいため注意が必要です。

食中毒かもと思ったら

十分に対策をしていても、状況によっては食中毒が起こってしまうこともあり得ます。「食中毒かな」と思ったら脱水症状を防ぐためにまず水分補給をしてください。吐き気や嘔吐がある場合は吐きやすいように横向きに寝て安静にしましょう。仰向けではなく横向きなのは、吐いたものが喉に詰まって窒息してしまう恐れがあるからです。特に乳幼児や高齢者、意識が混濁している人の場合は吐瀉物による窒息の危険が高まります。

また、下痢が続いた場合、下痢止めの薬を飲みたくなるかもしれませんが、自己判断で市販薬を使用してはいけません。症状を悪化させてしまう可能性があるからです。下痢が起きている時は、原因となる微生物や物質が消化管のなかに留まっている状態。つまり、下痢止めを使ってしまうと原因である微生物や物質の排泄が遅れてしまうということ。

食中毒は普通の体調不良とは違うので、必ず医療機関を受診しましょう。自分で病院に行く・連れていくのが難しい場合や、危険な状態の時は速やかに救急車を呼んでください。早期の治療で適切な処置を受けることが、重症化回避と回復への近道です。

吐瀉物・糞便の処理方法

食中毒に感染した人の吐瀉物や糞便には、大量の細菌・ウイルスが含まれています。したがって、その処理には十分に注意しなければなりません。床等に飛び散った吐瀉物や糞便を処理する時は、捨てても良いエプロン(いらない服)、マスクと手袋を着用しましょう。

そして、汚物中の細菌やウイルスが飛び散らないようにペーパータオル等で静かに拭き取り、その後は次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm)で浸すように拭きます。最後に水拭きをして終了です。拭き取るのに使用したペーパータオル等はビニール袋に密封し、袋は二重にして捨てましょう。

ウイルスによる食中毒の場合には乾燥すると空気中に漂いやすくなるため、乾燥しないうちに迅速な対応・処理をしてください。

まとめ

今回は近年増加している食中毒対策についてご紹介しました。初めて知った対策方法もあったのではないでしょうか。また、それぞれの食中毒菌の特徴について驚いた方もいらっしゃるかもしれません。正しい知識を身につけることは、自分や周りの人を守ることにつながります。

えいようJoinでは、これからも安全で健康的な食生活を送るためのお役立ち情報を発信していくので、他のコラムもぜひ読んでみてくださいね。

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