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冬に人気のあったか鍋料理!管理栄養士おすすめのご当地鍋一覧

寒い季節は熱々の鍋料理が恋しくなりますよね。日本各地では、その土地の風土や歴史、文化が反映されたご当地鍋が食べられています。多種多様なご当地鍋の中でも人気の高い鍋料理を管理栄養士の視点からご紹介。冬は美味しい鍋料理で温まりましょう。

冬に食べたい!人気のご当地鍋ランキング

全国にはその地域ならではの特色が見られるご当地鍋がいくつも存在します。ここでは、特におすすめしたいご当地鍋をランキング形式でピックアップ。ランキングの順位は筆者の独断で決めました。栄養学の観点をもとに、冬に食べたいご当地鍋トップ5をご紹介します。

石狩鍋(北海道)

北海道の代表的な郷土料理である石狩鍋は、鮭と味噌の旨味が溶け合ったご当地鍋です。古くは漁師の料理として食べられていたそうですが、今日では観光名所での食事や家庭料理として広く親しまれています。ぶつ切りにした鮭の身とアラを野菜と一緒にだし汁で煮込み、味噌で味を締めるので、身体の芯から温まる鍋料理です。

同じく北海道名物であるちゃんちゃん焼きのように、キャベツや玉ねぎなどたっぷりの野菜が使われています。ビタミンCを始めとする栄養素は切ったり加熱したりすると流れ出てしまいますが、鍋料理なら栄養素がスープに溶け込むので余すことなく栄養を摂れるのが嬉しいですね。

私たちの身体を作るたんぱく質は、20種類のアミノ酸で構成されています。そのうちの9種類は必須アミノ酸と呼ばれ、体内での合成が難しいため食事から摂取しなければなりません。鮭はすべての必須アミノ酸が豊富に含まれている優秀な食材です。

北海道ならではの冬を乗り切る知恵がご当地鍋にもよく表れています。今年もラニーニャ現象が継続するとのことで厳しい冬になるといわれていますが、そんな時こそ石狩鍋を食べて温もりと栄養を蓄えたいですね。

てっちり(大阪府)

てっちりとは、大阪で親しまれているふぐ鍋のことです。ふぐの聖地として有名な山口県・下関を始め、ふぐ鍋は全国各地で食べられていますが、「てっちり」という呼び方は大阪で生まれたといわれています。

もともとは戦前に人気だったふぐ汁が発祥だそうで、ふぐから取った出汁にふぐの身を入れた、まさにふぐ尽くしの一品。そのふぐ汁に、野菜などの具材をいろいろと入れるようになり、今のてっちり=ふぐ鍋になりました。

てっちりのメインはふぐ!やはり着目したいのはふぐの栄養素です。ふぐにはカリウムビタミンDなどの栄養素が含まれており、皮の部分からはコラーゲンもたっぷり摂ることができます。しかも、ふぐは低カロリー・低脂質なのでダイエットにもおすすめです。ふぐと同じく高級魚かつ白身魚である鯛と比べるとその差は歴然!

養殖の鯛(真鯛・皮付き)が100gあたり160kcalなのに対し、ふぐ(マフグ)は78kcalと半分程度しかありません。また、肉や魚などの動物性脂肪に多く含まれている飽和脂肪酸は、悪玉コレステロールを増加させる働きがあります。たとえば飽和脂肪酸の一種であるミリスチン酸の値で見ると、養殖の鯛(真鯛・皮付き)は100gあたり360mgですが、ふぐ(マフグ)はたったの1mgです。

ふぐは美容と健康の強い味方。大阪生まれのご当地鍋「てっちり」を食べて身体の内側から綺麗になりましょう。

芋煮鍋(山形)

秋の風物詩である「日本一の芋煮会フェスティバル」に代表されるように、山形の芋煮は全国的に有名です。食べたことはなくても聞いたことがあるという方は多いのではないでしょうか。芋煮鍋に使われるのは、ほっくりトロトロの里芋。それに牛肉やこんにゃく、ねぎなどの具材もたっぷり入った栄養満点の鍋料理です。芋煮鍋に入れる具材や味付けは地域・家庭によってさまざまなので、アレンジのしがいもあります。

そんな山形のご当地鍋の主役である里芋はカリウムが豊富!ナトリウム(塩分)を体外へ出す働きがあるため、高血圧の予防やむくみの解消が期待できます。芋煮鍋は醤油でしっかり味付けをするため塩分摂取量が多くなりやすいですが、たっぷりの里芋と一緒に食べれば余計な塩分を溜めずに済むのがポイントです。昔の人の知恵ですね。

また、一緒に入っている牛バラ肉は、疲労回復を促すアスパラギン酸リシン、筋肉の形成を助けるロイシンなどの身体に嬉しい栄養素が豊富に含まれています。旨味成分であるグルタミン酸も多く、舌もお腹も大満足のご当地鍋と言えるでしょう。

飛鳥鍋(奈良県)

飛鳥鍋は、古都・奈良の首都として人気の観光地である明日香村の名物料理として考案されたご当地鍋です。鶏肉や野菜を牛乳と出汁で煮込んだまろやかな味が特徴。野菜と鶏肉の旨味が牛乳によって調和した食べやすい鍋料理なので、老若男女問わず愛されています。

ご存じの通り、牛乳は骨や歯の形成に欠かせないカルシウムが豊富に含まれており、成長期の子どもから、栄養素の吸収率が低下する高齢者まで、すべての人におすすめしたい食材です。

とはいえ、なかには牛乳を飲むとお腹を壊すという方もいるでしょう。それは「乳糖不耐症」が原因かもしれません。牛乳に含まれる乳糖(ラクトース)を分解するラクターゼという消化酵素の分泌量が少ないため、満足に消化できずお腹がゴロゴロしたり、下痢になったりしてしまうのです。大人になるとラクターゼの分泌量が減るため、成人の約80%が乳糖不耐症だといわれています。

ですが、牛乳は温めると胃腸への刺激が少なくなり、ラクターゼが活性化しやすいです。また、鍋料理なら他の食材と一緒に食べることができるので消化しやすく、乳糖不耐症でも心置きなく牛乳を体内に取り入れられます。

誰にとっても重要な栄養素が含まれる牛乳。美味しい飛鳥鍋を家族で囲みながら、牛乳を積極的に取り入れましょう。

参考:長野県医師会「乳糖不耐症」と「牛乳アレルギー」
参考:酪農PLUS+「乳糖分解酵素がない人でも牛乳料理が大丈夫なのはなぜですか?」

まる鍋(静岡県)

まる鍋とは、スッポンをメインにした鍋料理です。関西地方でも食べられていますが、この頃はスッポンの養殖が盛んな静岡県・浜名湖で人気を集めています。静岡県のご当地鍋というと、土手鍋のように濃い味付けを想像する方も多いかもしれません。しかし、スッポンは癖が少なく滋味深い食材です。その良さを活かすため、鍋に入れるのは水、みりん、醤油のみ。出汁すら使わないので、スッポンの旨味が十分に味わえる一品です。

スッポンは滋養強壮によく効くことで有名な通り、栄養価の高い食材です。ビタミンAの主要成分であるレチノールや、骨や歯を丈夫にするリンなどが豊富に含まれています。美容成分として人気のコラーゲンも多いです。また、脳や神経の機能を高めるDHA(ドコサヘキサエン酸)が含まれており、動脈硬化を原因とする循環器系疾患やアルツハイマー型認知症の予防に効果があるとされています。

まる鍋はスッポンだけで楽しむのが一般的ですが、栄養バランスが気になる場合は白菜やにんじん、長ねぎなどを一緒に煮込んで食べるのも良いでしょう。野菜の旨味が混じり合い、上品な味わいに仕上がります。締めはご飯がおすすめです。スッポンから出た煮汁をたっぷりとご飯に吸わせ、おじやにして最後まで美味しく頂きましょう。

鍋料理は冬の醍醐味

全国にはその土地で愛されてきたご当地鍋がたくさんあります。今回ご紹介したのはその一部にすぎません。ひと口に鍋料理といっても使う食材や味付けはさまざまです。ご当地鍋だからこそ楽しめる多彩な味覚。この冬のお供に、気になるご当地鍋を食べてみてはいかがでしょうか。

参考:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

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