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生活習慣病・認知症予防におすすめの油とは? オメガ3系脂肪酸の健康効果と使い方を解説

「最近、人の名前が出てこない…」「記憶力の衰えが気になる…」「健診結果の数値が気になる…」
年齢を重ねると、このような悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。生活習慣病・認知症予防にはバランスの良い食事が基本ですが、積極的に摂るとよいとされているのが、オメガ3系脂肪酸を含む油です。
ここでは、健康効果が高いといわれている、オメガ3系脂肪酸について管理栄養士が解説します。

オメガ3系脂肪酸とは? どんな食品に含まれている?

オメガ3系脂肪酸を含む油は、健康効果が高いことで注目されていますが、どれを購入したらよいのか、迷ってしまいますよね?ここでは、オメガ3系脂肪酸を含む油を紹介します。

オメガ3系脂肪酸とは?

脂肪酸は脂質を構成する成分の一種で、多くの種類があります。脂肪酸は構造の違いから、飽和脂肪酸不飽和脂肪酸に分類できます。さらに不飽和脂肪酸の中でも健康効果が高いと注目されているのが「オメガ3系脂肪酸(n-3系脂肪酸)」です。α-リノレン酸やEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などが属します。

それぞれの特徴は以下のとおりです。

種類 特徴 多く含む食品

α-リノレン酸

体内で合成されないため、食品から摂る必要がある「必須脂肪酸」のひとつ。
がんの抑制や高血圧の予防、アレルギー症状の改善のほか、脳や神経系の働きに関与しています。体内でEPA・DHAに変換されます。

アマニ油・えごま油など

EPA

抗血栓作用があり、血中脂質のバランスを整えます。 青い背の魚など
DHA 血中脂質のバランスを整える、認知症予防効果が期待されています。 青い背の魚など

参考:「食品成分表2020」資料編 女子栄養大学出版部 193ページ
            「からだにいい食事と栄養の教科書」本多京子監修 永岡書店 92~93ページ

オメガ3系脂肪酸を多く含む食品とは?

■生食向きの油「アマニ油」

アマニ油は、アマ科の一年草「アマ」の種子「アマニ」が原料で、別名「フラックス油」といいます。青味のあるフレッシュな香りと苦味が特徴で、酸化しやすく熱に弱いという性質をもっています。
加熱調理には不向きで、生のままドレッシングやスープにかけるなどして使います。
アマニ油に含まれているα-リノレン酸には血中中性脂肪を減らす効果が期待されています

■生食向きの油「えごま油」

えごま油は、シソ科の一年草「荏胡麻(えごま)」の種子をしぼって作られる油で、別名「しそ油」といいます。えごま油の原料であるえごまは、シソの葉とよく似ており、韓国では野菜として日常的に食べられています。
えごま油は、さらっとしていて味と香りはほとんどありません。えごま油も酸化しやすく熱に弱いので、加熱調理に不向きなのが特徴。ドレッシングとして使ったり、スープにかけたりするなど生食向きの油です。
えごま油は、アマニ油と同じく、オメガ3系脂肪酸であるα-リノレン酸が豊富に含まれており、健康効果が期待されています。

■青い背の魚に豊富な油「EPA(エイコサペンタエン酸)」

EPA(エイコサペンタエン酸)は、青い背の魚などに含まれるオメガ3系脂肪酸で、体内で必要量を作ることはできない必須脂肪酸です。EPAはサバ、マグロ、イワシ、ブリ、サンマ、子持ちガレイなど、脂肪の多い魚に多く含まれています。 魚やアザラシを常食するイヌイットでは、脂肪摂取量が多いにもかかわらず血栓症や心疾患が非常に少ないことから、注目された成分です。
EPAは血液を固まりにくくして動脈硬化を予防したり、中性脂肪を低下させたりする作用があります。そのため、生活習慣病予防や改善のために積極的に摂ることがすすめられています。

■青い背の魚に豊富な油「DHA(ドコサヘキサエン酸)」

DHA(ドコサヘキサエン酸)もオメガ3系脂肪酸で、マグロやカツオ、ハマチ、ブリ、サバ、イワシ、サンマ、アジなど、青い背の魚に多く含まれています。
魚のほか、体内でα-リノレン酸からIPA(イコサペンタエン酸、青背魚に含まれている不飽和脂肪酸)を経て合成されます。
DHAは、脳や神経細胞に高濃度に含まれており、脳の健康を維持するうえで大切な成分認知症予防・改善効果が期待されています。小児期の脳の発達にも大事な成分で、特に胎児期から2歳までの脳内のDHA増加は著しく、この間にDHAを積極的に摂ることが重要と考えられています。
DHAを多く含む魚は、鮮度が良いほど栄養分も豊富です。買い物から帰ったら、すぐに冷蔵保存しましょう。DHAは酸化しやすいので、日持ちのする干物であっても、注意が必要です。

参考:「栄養と料理」2014年12月号46ページ
   「あたらしい栄養学」吉田・松田早苗監修 高橋書店 184~185ページ
   「栄養と料理」2014年12月号46ページ
   「からだにいい食事と栄養の教科書」本多京子監修 永岡書店 92~93ページ
   「あたらしい栄養学」吉田企世子・松田早苗監修 高橋書店 184~185ページ
   「日本栄養士会雑誌」2022年10月号 25ページ

オメガ3系脂肪酸はどのくらい摂ればいい? 1日の目安は?

「日本人の食事摂取基準2020年版」では、オメガ3系脂肪酸はn-3系脂肪酸の目安量として定められています。

年齢

目安量:男性

目安量:女性

18~49歳

2.0g

1.6g

50~64歳

2.2g

1.9g

65~74歳

2.2g

2.0g

75歳以上

2.1g

1.8g

オメガ3系脂肪酸は、アマニ油だと100g中56.63g、えごま油では100g中58.31g含まれています。65歳の女性だとアマニ油3.5gで小さじ1杯程度に相当します。
アマニ油やえごま油は生食向きなので、料理にかけたり、ドレッシングやマリネの材料としたり加熱せずに使うのに適していますが、摂りすぎるのもよくありません。小さじ1杯程度でも、オメガ3系脂肪酸の一日の目安量が十分摂れるため、他の油と置き換えるなどして上手に取り入れるとよいでしょう。 

参考:「八訂食品成分表2022」

毎日使うものだから注意したい! オメガ3系脂肪酸を含む油の取り扱い方

健康効果が高いオメガ3系脂肪酸ですが、特にα-リノレン酸を多く含むアマニ油やえごま油は熱で酸化しやすいので、加熱調理には適しません。
アマニ油やえごま油は酸化すると、「過酸化脂質」という体に有害な物質に変わるため、注意が必要です。油の酸化を遅らせるためにも、使用後はしっかりふたをするなど、空気に触れる機会を減らすようにしましょう。最近は中身が空気に触れないよう工夫されたボトル商品もス-パーなどでよく見かけるので、それらを選ぶのも選択肢のひとつです。
光に当たっても酸化するので、開封したものは冷暗所に保存して、なるべく早く使い切るのもポイントです

参考:「からだにいい食事と栄養の教科書」本多京子監修 永岡書店 92~93ページ

オメガ3系脂肪酸を多く含む油を上手に取り入れて健康的に

生活習慣病や認知症の予防・改善に役立つ、オメガ3系脂肪酸について解説しました。「体によいから」といって、毎回料理にかけてしまうと、脂質の摂りすぎになってしまいます。炒め物や揚げ物に使う油を控えめにして、アマニ油やえごま油に置き換えるなど上手に取り入れるとよいですね。
アマニ油やえごま油は保存法に気をつけることも大切です。酸化しやすいので、開封したものは冷暗所に保存してなるべく早く使い切るようにしましょう。

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