今、この瞬間、大規模な災害が発生したら・・・あなたはあなたのサロンを守ることは出来ますか?
2019年、災害大国ともいわれる日本では、8月に前線に伴う豪雨、そして台風第15号・第19号といった災害が各地を襲い、甚大な被害を受けました。多くの美容サロンも被害を受け、経営が出来ない状況に陥っているところも・・・

大雨や台風に関しては直前まで被害を最小限に抑えるための対策をとれますが、地震や火山の噴火は突如発生するので大雨・台風のようにはいきません。そのような災害に見舞われても大きな被害を出さない為には、日々の災害対策が必要です。防災助成金や補助金を活用し、コストを抑えて防災計画を立てて有事に備えましょう。

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企業防災はサロン経営に必要不可欠

2011年の東日本大震災以降よく話題に出ている企業防災という言葉を聞いたことはありますか?サロンオーナーである皆様にも経営者として理解・認識をすることで、サロンを守ることができます。内閣府では企業防災について下記のとおり定めています。

企業防災には、地震などによる災害被害を最小化する「防災」の観点からアプローチする場合と、災害時の企業活動の維持または早期回復を目指す「事業継続」の観点からアプローチする場合があります。
両者は互いに密接に関わり合い、共通した要素も多く存在することから、双方ともに推進すべきものですが、説明の便宜上、区分しています。

引用元:内閣府 防災情報のページ「企業防災とは何ですか?」

内容を紐解くと、企業としてサロンでは2つの面から災害対策を考え、整備しなければいけないのです。
1つ目は「防災」として、サロンスタッフや設備・財産を守る、被害や二次災害を最小限に抑えるための事前対策、2つ目は「事業継続」として、重要な事業が存続できるよう取り組む・早期復旧のための事後対策です。

日本の企業の多くはすでに防災への取組を進めている背景もあるので、従来からやっていることと特に違いはないように思われるとの意見も多く聞かれます。しかし、従来の防災対策にとどまっていては、企業の災害、事故対応としては不十分との考えが広がっており、この2つの対策を講ずることが推進されています。

参考:内閣府 防災情報のページ「最新の防災基本計画」
参考:防災基本計画 令和元年5月 中央防災会議(P29) 

また、事業主であるサロンオーナーは、労働契約法にてサロンスタッフを守る配慮をするよう定められています。

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

引用元:e-Gov「労働契約法 第一章第五条」

災害発生時の被害状況などによっては法的責任が問われる可能性があるので、サロン全体で企業防災を考えましょう。

防災の備えを徹底しよう

2011年の東日本大震災後、多くの人々が防災に対して意識するようになりましたが、みなさんのサロンでは防災の備えを行っていますか?非常時の持ち出し袋は最低でもスタッフ全員分は用意しておきましょう。営業時に災害が発生した場合に、来店されているお客様へも持ち出し袋をお渡しできるように、座席分は用意してくと良いでしょう。

あらかじめ持ち出し品がセットになったものも販売されていますが、常備薬や生理用品など個人で必要とするものが異なりますので、中身を入れ替えておくと心強いです。

サロンに滞在することができない場合は、近隣の安全な場所・避難所へ行き、避難生活を送ることになります。避難所生活に必要なものを持ち出し用のリュックサックに詰めておき、有事の際、すぐに持ち出せるように用意しておきましょう。非常時の持ち出し品は、日本赤十字社が公開している一覧表があるので是非参考にしてください。

参考:日本赤十字社 東京支部「非常時の持ち出し品・備蓄品チェックリスト」

また、持ち出し品以外に防災の備えとして重要となるのが、サロンの設備の防災対策です。サロンには高価な機材や、備品や消耗品・店販商品、それらを収納する戸棚などが多数あります。それらが倒れてしまったり崩壊したりすると、被害が大きくなってしまいます。倒れる恐れのあるものはしっかりと固定をしましょう。

突っ張り棒式の器具を棚と天井の硬いところに取り付けることで転倒防止対策ができます。もしくは、L字方の金具で棚と壁を固定することも有効的です。冷蔵庫などの重さのある大型家電・家具は、裏側をワイヤーなどで壁に固定しておきましょう。テレビなど小型のものには粘着マットを敷いて転倒を防ぎ、必要に応じて機器の裏側をワイヤーなどで壁やテレビボードに固定するとよいでしょう。

また、上下に分かれている棚は連結しておきましょう。開き戸タイプには、揺れで戸が開き格納物が飛び出さないように留め金を付け、ガラスにはガラス飛散防止フィルムを張り対策をします。

鏡も落ちてしまうことが無いようにしっかりと接着・固定されているか確認が必要です。
飛散防止フィルムやコーティングをして、災害時に破片がお客様に降りかからないようにしましょう。ハンガーラックや観葉植物、置き型の照明も倒れる危険性があるので、壁や床に固定をし、吊り照明はワイヤーで天井に固定することで落下を防げます。

路面店のサロンでは、入口全体がガラス張りになっており、サロン内が見えるおしゃれなデザインが多いです。しかし、強風や地震が発生するとガラスが割れる恐れがあります。強風で物が飛んでこなくても、ガラスの強度が低いと風圧だけで割れてしまうことも・・・対策として強化ガラスに替えたり、飛散防止フィルムを張ったりコーティング剤を塗布して対策をしましょう。

予算的に厳しい場合などはカーテンを設置し、強風時に閉めるようにすると店内への飛散防止に効果的です。また、素足になることの多いエステサロンやネイルサロンでは、ガラスの破片が飛散した部屋でも安全に移動・避難できるように、スリッパなどを施術台の近くに用意しておきましょう。

店舗の外に構えている看板など掲示物は落下することがあります。もし所有する看板の取り付けが不十分なまま、危険な状態で放置し、災害時に第三者や物に被害を出した場合は管理責任を問われます。実際に地震でブロック塀が崩壊し、第三者が怪我・死亡した事例において民事訴訟・刑事告訴されています。定期的に建物全体の点検を行い、しっかりと整備をしましょう。

デパートやショッピングモールなどの商業施設にテナントとして入っているサロンは、定期的に施設全体の防災・避難訓練の実施がされています。代表者だけでも絶対に参加をして、避難経路を把握してください。災害が起こった場合は施設の防火管理者や誘導係員の指示に従って速やかに避難しましょう。

ライフライン復旧までに重要な防災の備え

大規模な災害が発生したときには、電気・ガス・水道、ネット通信など、生活する上で必要とするライフラインが止まってしまう可能性があります。ライフラインが止まっても生活ができるように、日ごろから備蓄などの備えをしておくことが大事です。

特にヘアサロンで重要になってくるのは水!施術で多くの量の水を使っているため、断水時の対策が必要不可欠です。サロンで取り扱う薬剤によって洗い流す際に使用する水の量が異なると思いますが、カラー・パーマ剤を塗布しているお客様1人に対して最低10リットル程度用意しておくと安心でしょう。保管スペースが必要ですが、10~15リットル蓄えることができる防災用ウォータータンクを座席分用意しておくと便利です。

エステサロンでは体にジェルやクリームを塗布し、術後にシャワーを必須としているサロンもあります。断水時にはシャワーが使えなくなるので、身体拭き用のウエットティッシュを備蓄しておくと良いでしょう。

断水と同じくらい怖いのが停電です!停電してしまうとレジが使えなくなり、会計が出来ません。スマートフォンやタブレット端末も充電が切れると利用できなくなります。空調設備も停止してしまい、真夏・真冬はかなり厳しい状況に陥ってしまいます。業務用の非常用バッテリーを整備して対策を取りましょう。

ネイルサロンでは電池式のネイルマシンや硬化用ライトを予備として備えておくと、中途半端な仕上がりでお客様を帰さずに済むので検討してみてください。非常用バッテリーを用意するより安価なのでおすすめです。

参考:東京都水道局「災害時に水を配る場所 ~災害時給水ステーション~」
参考:東京都水道局「水の上手な使い方」

大雪災害の対策も忘れない!

災害対策といえば「地震」「台風」による災害を想像しがちですが、これからの季節警戒すべきは「大雪」への対策です。
近年大雪に慣れていない地域では記録的な積雪が観測されています。慣れない除雪を行うときや、積雪した場所を車両や徒歩で移動するときには十分な対策と配慮をするように心がけましょう。
内閣府では「命を守る除雪中の事故防止10箇条」として、注意すべきポイントを喚起しています。

命を守る除雪中の事故防止10箇条
1.作業は家族、隣近所にも声をかけて2人以上で行う!
2.建物の周りに雪を残して雪下ろし!
 ・転落死亡事故の51%で地面に身体を強打しています。
3.晴れの日ほど要注意、屋根の雪がゆるんでいる!
 ・暖かい日の午後の作業は、特に注意が必要です。
4.はしごの固定を忘れずに!
 ・はしごの足元をしっかり固め、上部はロープ等で固定。長さは、軒先より60cm以上高くしましょう。
 ・はしごの昇り降りに加え、はしごから屋根への移動時は特に注意が必要です。
5.エンジンを切ってから、除雪機の雪詰まりの取り除き
 ・除雪作業中の死亡事故の5%は、除雪機に巻き込まれたことが原因です。
6.低い屋根でも油断は禁物!
 ・転落死亡事故の60%は、1階の屋根からの転落が原因です。
7.作業開始直後と疲れた頃は特に慎重に作業!
 ・屋根に上がる前に準備運動をしておきましょう。
 ・雪下ろしは重労働です。事前に体調を整えておくとともに、雪下ろし中は、十分に休息をとりながら、何回かに分けて作業を行いましょう。
8.面倒でも命綱とヘルメットを!
 ・ヘルメットは、あご紐を締めて正しく着用しましょう。
 ・命綱は、ザイルや麻ロープ等、すべりにくく、ゆるみにくいものを使用し、正しく結びましょう。
9.命綱、除雪機など用具はこまめに手入れ・点検を!
10.作業のときには携帯電話を持っていく!

引用元:内閣府防災情報のページ「特集 大雪に備える」

サロンに隣接している空き家や店舗の除雪作業が行われず、危険な状態になっている場合には、法律の定めに基づいて市町村長の判断で雪下ろしを行うことが可能です。サロンや従業員・お客様に被害が出そうな場合は市町村に問い合わせて対応をしてください。

参考:首相官邸「雪害では、どのような災害が起こるのか」

安否確認方法!災害用伝言サービスを活用する

いざ、災害が発生した場合、自身の安全の確保が最優先です。安全確保の後にサロンオーナーがすべきことは従業員やお客様の安否確認です。安否確認をすることで、その後の避難や救助、復旧作業などすべきことが明確化できます。

多くの災害被害にあってきた日本では、様々な安否確認のツール・手段がありますので、今一度サロンでどのような安否確認方法を行うか共有しておきましょう。

一番手軽に活用できる安否確認方法は携帯キャリアの災害用伝言板サービスです。事業者間をまたいだ安否確認が可能な「全社一括検索」サービスがあるのでキャリアが異なる場合でも利用できます。サロンの営業時間は固定電話でも活用できる災害用伝言ダイヤル(171)も必要に応じて活用することをお勧めします。

参考:株式会社NTTドコモ「災害用伝言板」
参考:KDDI株式会社「災害用伝言板サービス」
参考:ソフトバンク株式会社「災害用伝言板/災害用音声お届けサービス」
参考:NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)」

また、警備会社ではセキュリティサービス以外に安否確認サービスを実施しています。災害後の指示の配信などのサービスやサポートが充実しているので、大型のサロンでは併せて導入するのも良いでしょう。

従業員の安否確認と同じく大切なのがお客様の安否確認です。営業時間中はサロンに向かっているお客様がいます。直近の時間に予約されているお客様から順に、電話を使って安否確認を行いましょう。また、サロンの被災状況に応じて来店をお断りしなければいけないこともあるので、予約の変更やキャンセルについて確実に連絡をしましょう。

お客様がサロンの近くまで来られているようでしたら避難場所としてサロンを開放し、サロン自体が危険な状態であればサロン近くの避難場所を伝え安全を確保していただきましょう。

休業案内を迅速に行う

被災状況や気象情報によっては、サロンを臨時休業せざるを得ません。サロンのスタッフやお客様の安全を第一に考え、オーナーの迅速な意思決定が必要になります。まず休業することが決まったらスタッフへの連絡を行いましょう。全スタッフへの周知伝達が済んでから、お客様へ休業案内とお詫びの連絡をします。

休業案内の連絡手段としては、メルマガ配信システムの利用がおすすめです。日ごろからキャンペーンや夏季や冬季などの長期休業の連絡ツールとして使っているサロンは多いです。被災して電話回線やネット通信機能が麻痺したとき、お客様に電話をかけても連絡を取っていただくことは出来ませんが、メールだと復旧後すぐに受信できるので、タイムラグは生じますが確実にお知らせができます。

次に活用できるシステムはサロンのホームページやSNSです。誰もが更新できる口コミサイトの営業状況よりも、サロンが直接運営発信しているホームページに休業案内を掲載したほうが信頼できます。確実な情報を発信できるシステムを整備しましょう。また、近年若者を中心に情報取得の手段としてSNSを利用する人が増えています。リアルタイムで発信できるためタイムラグを恐れずに活用できます。

しかし、SNSは災害直後に利用者が急増し、投稿数も増えます。投稿数が増えることでサロンが発信した休業案内の投稿がタイムライン上で流れてしまい、本当に情報を伝えたい人に伝わらないという懸念があります。SNSを使用して休業案内などの情報発信をする際は、数時間おきに同じ内容の投稿を繰り返すようにしましょう。

参考:NHK放送文化研究所「SNSを情報ツールとして使う若者たち」

災害が原因で休業した場合は、各種保険で負担を補うことが可能です。各保険会社によって条件や補償内容は異なりますので、サロンで加入している火災保険や休業補償保険を見直してみましょう。

災害対策・被災後に活用できる助成金支援制度

企業防災、防災の備え……とは言いますが、防災対策を講じる上で必要となってくるのがお金ですよね。サロンや従業員の安全確保をしたいけれど資金繰りがネックになりなかなか進まない現状も多々見受けられます。そこで活用すべきものが、国の制度である助成金です。

災害関係の助成金と聞けば、災害後の復興支援の助成金や補助金のイメージが強いですが、実は災害後に適用されるものだけでなく非常食やヘルメットの用意に関する費用の補助金など、災害前の対策における助成金・補助金支援制度があるのです!

もちろん備品や消耗品といった物資だけでなく、耐震補強工事などの防災・減災対策にも多額の助成金や融資が受けられます。これから非常グッズを揃えて、店舗の耐震診断や補強工事を検討されている方は制度をリサーチすることをおすすめします。(※制度や地方自治体によって条件や申請期間、支給額が異なります。)

災害後は建物や機器・資材への補助金は勿論、災害の規模などを考慮し雇用保険制度の特別措置などが講じられます。経営を継続する為にもいざというときには申請できるよう、雇用契約書・就業規則・出勤簿・賃金台帳などをしっかり揃えて保管しておきましょう。

今年発生した災害を対象とした各種支援が厚生労働省にてまとめられていますので、今回被災された方はもちろん今後の参考にご覧ください。

参考:厚生労働省「令和元年台風第19号による被害に伴う労働基準法・労働契約法に関するQ&A【令和元年11月1日版】」

災害に負けないサロン経営

防災対策は、「これで絶対に大丈夫!」ということはありません。今回紹介した防災対策だけでなく、一人一人が、被害の大きさや危険性を考え、その被害をできるだけおさえる為に必要な対策を取ることが重要です。自然災害に強く、地域に根差した安心できる・頼りがいのあるサロンづくりを進めてください。

サロンにとって災害対策はスタッフやお客様を守り、サロン経営を継続させるために必要不可欠です。今回のコラムを通してサロン全体で防災息を高めるきっかけになれば幸いです。

参考:首相官邸「防災の手引き~いろんな災害を知って備えよう~」
参考:内閣府「防災情報のページ」
参考:国土交通省ハザードマップポータルサイト~身のまわりの災害リスクを調べる~