令和元年10月1日の消費税率の引き上げから早くも2か月が経とうとしています。税率の引き上げ以降、多くの企業でトラブルが発生した件や、消費者の負担についてなど、日々増税にまつわるニュースが取り上げられており、日本経済は大きな混乱に見舞われています。そのような混乱のなか、皆様のサロンではスムーズに対応できましたか?会計などのお客様対応はトラブルなく済みましたでしょうか?
今回のコラムでは実際に生じた増税にまつわる問題を提起し、解決策をご提案します。サロン経営に支障の出ないように対策を立てるとき、是非参考にしてください。

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消費税増税によって変わったこと

消費税が8%から10%に引き上げられることによって、サロンを運営する上で多くの時間と労力を使い、様々な対策を立てられたのではないでしょうか。2014年に5%から8%へ消費税が引き上げられるタイミングで対応した方でも、今回の軽減税率制度では大変苦労されていたようです。

増税前に公開し、反響を呼んだ消費税率引き上げは美容サロンに大きな影響を与える?!軽減税率の補助金でエステ・リラクのレジを賢く購入のコラムでも提案させていただいた対策の内容を含めつつ、増税後のサロンに足りていないものなど再確認してみましょう!

メニューの価格設定

消費税率が10%になったことで、施術に使用する薬剤などの消耗品をはじめとした備品・仕事道具の仕入れ価格が大きく変動しました。この仕入れ価格の変動に伴い、サロンで提供している施術サービス・店販販売の価格を見直し、コスト分の値上げをされたところが多く見受けられます。

サロンを円滑に経営するにあたって値上げをすることは仕方のないことですが、サービスを受けるお客様からすればとても残念な変化です・・・仕入れ価格が高騰した後も、お客様第一という考えを持って、値上げをせずに据え置きでサービス提供をしているサロンも存在しますが、今後仕入れ先が更なる価格改定を行う可能性もあります。その際には仕入れ価格を考慮してメニュー価格を見直さなければ、経営圧迫につながる恐れがあります。

サービスなどの価格を上げることについては、サロンのお客様だけでなく、消費者の立場から「増税したからという理由で、大幅な価格改定や便乗値上げを許してよいのか。」といった声があちこちで上がっていますが、合理的な理由があれば便乗値上げに当たりません。しかし、極端な値上げは自身で経営を苦しめることになるので見直してみましょう。

メニューの価格表示

2013年10月の消費税率の引き上げ時の価格設定変更後、各所で価格表示の対応に追われませんでしたか?消費税の引き上げへの対応が確実に実施できるよう、価格表示などの作業負担に配慮し、表示する価格が税込価格であると誤った認識をされないための処置がされていれば、総額表示(税込価格の表示)をしなくて良いこととなっています。前回のコラムでもご紹介した認められる消費税の表示例を参考に、誤った表示をしていないか確認をしてみてください。

認められる消費税の表示例

軽減税率制度に対応したレジの導入

施術メニューや店販の価格設定の表示が済んでも、まだまだやるべきことがあります。それは、今回の消費税率引き上げに伴って新たに定められた軽減税率制度への対応です!

今回の消費税率引き上げは軽減税率制度の導入により、消費税率8%が一律10%になるわけではなく、一部のものは据え置きの8%になっています。そのため、両方の税率の商品を取り扱う店舗では、それぞれの税率に対応できるレジを導入しなければいけませんでした。こちらも2013年10月の消費税率の引き上げ時に、複数税率に対応できるレジを導入し対策をされていた店舗があったようですね。

今回のレジの導入や改修で、大きな支出があったサロンが多いのではないでしょうか?そこで活用すべき制度が「軽減税率対策補助金」、いわゆるレジ補助金です!支援対象の条件をクリアしていれば申請可能な補助金制度です。申請受付期限は2019年12月16日までですので、まだ助成金申請をしていない方は是非軽減税率対策補助金事務局ホームページをご確認ください。軽減税率対策補助金の手続要件については中小企業庁ホームページをご覧ください

参考:軽減税率対策補助金事務局
参考:経済産業省「軽減税率対策補助金の手続要件を変更します」(2019年8月28日)

また、経済産業省を名乗り、「レジで8%、10%を表示することが義務づけられている。表示しないと罰則がつく。」等の誤った情報を伝え、レジの購入をせまる事例が発生しているそうです。注意喚起が出ていますので、不審な電話には十分注意をしましょう。増税におけるメリットを最大限活用し、軽減税率に伴う補助金などの制度を積極的に利用することで、サロン経営が円滑にできます。

美容サロンで起こった増税トラブル

では、今回の消費税増税において起こったトラブルを振り返ってみましょう。
それぞれの問題点から原因を理解・追及し、解決策をご提案します。

軽減税率対象外の商品も8%で計算された

基本的に美容サロンで提供する施術はすべて10%の消費税率ですが、栄養ドリンクやサプリメントといった食品に該当する店販商品の税率は8%です。そのような税率の異なる店販を取り扱うサロンで、複数税率で対応ができなかったようです。逆に全ての商品が10%の税率でしか処理ができなかったという話も耳にします。お客様もレジを担当したスタッフもかなり混乱したことでしょう。手間のかかる作業ではありますが、そのようなサロンでは手書きの領収書を都度発行していたようです。

原因としてはレジシステムの導入や改修での設定ミスが主にあったと思われます。解決策としては、新規導入の機器は開店前に必ず試運転し、設定に問題がないかを確認することが第一です。今後も機器のトラブルで同様の事態が生じる可能性があります。今一度サロンでレジトラブルの対処方法や、手書きでの領収書の発行について、周知理解を進めておきましょう。

キャッシュレス・ポイント還元事業の加盟店登録が遅れた

加盟店登録の遅れは、現在ニュースでも頻繁に挙げられており、多くの美容サロンも悩まされている問題です。
遅れている理由としては、2つ挙げられます。まず、キャッシュレス・ポイント還元事業は事業者だけでなく、国やクレジット会社など多くの組織が関わっています。これらのいずれかが処理を誤ったこと、手続きが遅れたことで、加盟店登録の遅れが生じているようです。また、増税前後に駆け込み申請を行った店舗が急増しており、事業参加に間に合わずに順番待ちの状況になっています。

実際に増税後、キャッシュレス決済の利用者数や使用率は増加しています。それに伴って、現金を最低限しか持ち歩かない消費者も増えました。つまり、キャッシュレス決済ができない店舗での消費活動が減っているのです。そのようなご時世に還元制度の加盟店でないことは、サロン経営において痛手になりうるでしょう。

決済事業者や地方自治体によっては独自の還元キャンペーンを行っているので、事業の加盟店登録をしていない店舗でもキャッシュレス決済の導入は重要です。申請が間に合っていない・まだ申請をしていないというサロンでは、クレジットやQR決済などのキャッシュレス決済システムの整備を進めていくことが、集客や売上を伸ばすポイントとなるでしょう。

還元率が誤って登録された

還元率5%で加盟店登録申請していたのにも関わらず、実際は還元率が2%として間違って登録されていたというトラブルも発生しています。2%が5%に誤っているところも。
このトラブルは決済事業者が還元対象の店舗登録する時に、誤って入力したことが原因とされています。経済産業省より決済事業者に是正指示し、早急な修正処理に取り組んでいるとのことです。

ちなみに、この事業における還元率は、中小事業者の店舗では5%、大手のコンビニや飲食店などのフランチャイズ店では2%となっています。他にも、「還元対象の店舗が分かる経済産業省のマップ上で、店舗の位置が誤って表示されていた。」「送られてきたポスターやステッカーの種類(還元率)が違った。取り扱っている決済手段が違った。」という声も上がっています。

その他、美容業界以外では、「価格改定対応が10月1日までに間に合わなかった為、急遽システムメンテナンスを実施した。」など、システム障害が多く目立ち、サービスが利用できない状態になりました。

また、軽減税率制度に関する問題としてイートイン脱税なるものが、世間を賑わしています。イートイン脱税とは、飲食店やコンビニで、テイクアウトとウソの申告をして税率8%で商品を購入し、その商品を店内で消費する行動を指します。イートインで商品を購入・消費する場合は税率10%で取引をしなければいけない為、本来支払うべき2%の消費税を故意に支払わないという行為が問題視されていますが、現状罰則の規定や逮捕事例がありません。今後罰則が制定されるかもしれません。

キャッシュレス・ポイント還元事業の現状

キャッシュレス・ポイント還元事業(キャッシュレス・消費者還元事業)は、経済産業省に採択され、景気の腰折れを防ごうという目的で実施されています。キャッシュレス決済をするとポイントによる還元が適応されるのですが、現状、増税前に政府が想定していた以上に、消費活動が活発になっており、国の予算が足りないという状況に陥っています。11月29日に2019年度補正予算案に、1500億円前後の追加歳出を盛り込む方針を固めたという発表があったので、当初の予定通り、2020年6月末まで還元事業は継続されそうです。

消費活動の活発化をサロンに反映させるためにも、加盟店登録がお済みでない方は、是非登録をすることをお勧めします!加盟店への登録申請は、2020年4月末まで可能です。

ちなみに、キャッシュレス・ポイント還元事業における登録加盟店数は、12月1日現在、約86万店であり、12月11日には約90万店になるとされています。10月下旬に約30万店あった登録待ち店舗はほぼほぼ解消されたようです。また、この還元事業制度の対象となる小売店などは約200万店あるとされております。皆様のサロンも導入できるかもしれませんので、集客や売上の為にも導入を検討していると良いでしょう。

参考:経済産業省「キャッシュレス・ポイント還元事業」
参考:経済産業省「キャッシュレス・ポイント還元事業に関する直近の状況について公表しました」

フリーランス美容師に知ってもらいたい適格請求書等保存方式(インボイス制度)

2023年10月1日より導入される制度適格請求書等保存方式(インボイス制度)をご存じでしょうか?
フリーランスで活躍する美容師やネイリストなど、個人事業主に新しく関わってくる、新制度です。今回の消費税率引き上げにおける軽減税率制度に伴い導入が予定されています。今回は簡単な概要をご説明します。

適格請求書(インボイス)とは、「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」であり、一定の要件を満たした領収書・請求書・納品書などの書類を指します。新制度が導入されたら、このインボイスを交付しなければ、仕入税額の控除が受けられなくなるのです!

課税事業者は仕入税額控除が適用されたほうが節税でき嬉しいので、インボイスを交付してくれる事業者と取引をしたいですよね。しかし、適格請求書発行事業者として登録がないと、インボイスの交付ができません。
インボイスを求める課税事業者と取引のあるフリーランサーは、事業者登録をしてインボイス交付ができるようにしなければ、取引先を失う・新規の取引先の獲得ができなくなる可能性が出てきます。

また、課税事業者でなければ、事業者登録を受けることはできません。現在免税事業者(課税売上が年間1,000万円以下)として活動しているフリーランサーは、課税事業者になって仕事を受けるか、インボイスの交付ができないから取引を諦める、または、値引きして取引する、といった選択を迫られます。

適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、税務署長に申請書を提出する必要があります。登録申請書は、2021年10月1日から提出可能です。適格請求書等保存方式が導入される2023年10月1日から登録を受けるためには、2023年3月31日までに登録申請書を提出しましょう。困難な事情がある場合は、2023年9月30日までに提出となります。

とても複雑な制度ではありますが、フリーランスとして活躍する方の今後を左右する重要な制度です。インボイス制度の導入にはまだ猶予があるので、自身の現在の売上・今後の売上を想定し、適格請求書発行事業者の登録をするかしないか考えましょう。インボイス制度の詳細については、来年より連載コラムにて解説しますので、今しばらくお待ちください。

参考:国税庁コラム≪適格請求書等保存方式の導入について≫

少し話がそれますが、11月25日に国際通貨基金(IMF)が財政政策として、「高齢化のコストをまかなうためには、消費税率を2030年までに15%、2050年までに20%と引き上げる必要がある。」と声明を出しています。この声明通りに2030年に消費税率が15%に上がった場合や、法律が新しく制定された際には、また違った制度が出てきそうですね。

参考:国際通貨基金International Monetary Fund「2019年対日4条協議終了にあたっての声明」2019年11月25日

まとめ

サロンでの増税トラブルについての解決策は見つかりましたか?
消費税率の引き上げに関わる課題は今後も出てくるかもしれませんが、政策にのっとった対策を早め早めに取り組んでおくと、サロン経営において頭を抱えることも少なくなるでしょう。

海外で発行されたカードなど、制度に参加していないキャッシュレス手段は、今回のキャッシュレス還元対象外ですが、システムを整備しておくと、2020年の東京五輪や、2025年日本国際博覧会で増えると予測される訪日外国人旅行者の集客もしやすくなります。広い視野で先の未来を見据えて対策をすると得をするのではないでしょうか。

サロンでの生産性を向上させるためにも、レジなどのシステムを導入する際は、レジ補助金以外の補助金制度を利用するのも一つの手段です。経済の状況と助成金は深い関係性があります。積極的に活用していきましょう!

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