美容業界は一見華やかなように見えますが、実際は激務に翻弄されることが多く、様々な職業病が蔓延している世界でもあります。その中の一つが、過去のコラムでも反響の大きかった美容師の脂質異常症です。そこで今回はなぜ悪玉コレステロール値が高く、善玉コレステロール値は低くなるのか、脂質異常症による影響にはどのようなものがあるのか、どうすればコレステロール値を正常に戻せるのか、の3点を軸にお伝えしていきます。

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そもそもコレステロールとは?

コレステロールという言葉はよく耳にしますよね。何となく良くない印象があるけれど、その実態はよく分からないという方も多いのではないでしょうか。

コレステロールとは一言でいうと脂質の仲間です。とはいえ、エネルギーとして燃焼されることはなく、ホルモンやビタミンD、胆汁酸といった物質の原料となります。これらの物質は細胞の機能を調節したり、栄養素の吸収を手助けしたりと、人間の体内で重要な役割を持っています。ですので、コレステロールは私たちの体にとって欠かせないものなのです。では、なぜコレステロールの印象は良くないのでしょうか?

その答えはコレステロールの種類とバランスにあります。皆さんご存知の通り、コレステロールには善玉(HDLコレステロール)と悪玉(LDLコレステロール)の2種類があるのですが、それぞれの働きを知っているでしょうか?まずは悪玉コレステロールから説明しましょう。

全身の組織や細胞は主にこの悪玉からコレステロールを取り込んでいるのですが、悪玉の数が多いと血管の壁に余計な脂が付着して内部の壁を分厚くし、血管を詰まりやすくしてしまうのです!これによって動脈硬化やそれに伴う狭心症、心筋梗塞などを引き起こすリスクがグッと高まってしまいます……!

この状況を打破するのが善玉コレステロールです!これはHDLが肝臓に運ぶ、体内で使われなくなったコレステロールを指します。これらのコレステロールは肝臓から胆汁中にそのまま、あるいは代謝を受けて胆汁酸として排出されるので、体に悪影響を及ぼしません。そして、HDLは動脈硬化を起こした血管からもコレステロールを引き抜くことができるので、動脈硬化を改善できるのです!つまり、善玉コレステロールの数が多いほど、血管内は健康的な環境が保たれているというわけですね。

コレステロールのバランスと脂質異常症

体内のコレステロールの7080%は肝臓で作られています。残りは食事から摂取する分なので、小腸で吸収されることで体内に入ります。少し前までは一日に食事から摂取するコレステロール量の上限が決められていましたが、吸収率の個人差が大きいことと、食事から得るコレステロールが多い場合には体内で作るコレステロールを減らすという体の機能から、現在では特に上限が定められていません。

このように、通常は肝臓で作られる量、小腸から吸収される量、体内で使われる量、体外に排出される量のバランスがとられているため、コレステロール値は一定に保たれています。しかし、肝臓や細胞の機能が上手く働かなかったり、食事からの摂取量が増えたり、ホルモンバランスが変わったりすると、これらのバランスが崩れてしまい脂質異常症を引き起こしてしまうのです。

脂質異常症とは、悪玉コレステロールが多すぎる、あるいは善玉コレステロールが少なすぎる状態になる病気です。また、通常は保温や内臓の固定、外部からの衝撃緩和といった役割を担う中性脂肪が多すぎる場合も脂質異常症と言われています。

ここではコレステロールに注目して、脂質異常症が起こる原因を見ていきましょう。

☑喫煙
☑運動不足
☑栄養不足
☑過労
☑経口避妊薬
☑他の病気(高血圧や糖尿病、腎臓病、肝臓病など)

主に上記6つの事柄が異常を起こす引き金になっています。美容師の皆さんに当てはまるのは運動不足、栄養不足、過労の3つがあてはまるのではないでしょうか。

朝から晩までサロンに缶詰めで運動する時間も体力的余裕もない、サロンが忙しい時は食事を抜くこともあるという美容師の方は多いと思います。しかし、体は一番の資本です。健康でなければ満足に働くことも難しいでしょう。この機会に働き方や生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか?

ちなみに、家族にも脂質異常症の方がいる場合には、家族性高コレステロール血症という遺伝性の疾患を疑ったほうが良いです。200500人に一人の割合で発症する高頻度に見られる病で、患者数は日本全国で推定50万人を超えるのだとか。悪玉コレステロール値が生まれつき高く、若いうちから動脈硬化が進行していくため、早めに医療機関を受診することをオススメします。

参考:日本動脈硬化学会 家族性高コレステロール血症

コレステロール値を確認する方法

家族性高コレステロール血症の場合には皮膚に黄色の出来物(黄色腫)ができることが多いですが、通常だとコレステロール値の高低では見た目に大きな変化が出ません。自覚症状もないため、狭心症や心筋梗塞になって初めて発覚するというケースが多いのです。

そこで一番望ましいのは職場の健康診断を受けること!とはいえ、多くの美容師は多忙で健康診断に行くのが難しいでしょう…ですが、考えてみてください。健康診断を受けられなかったせいで病気を認知できず、スタッフが施術中に倒れてしまったとしたらどなるでしょうか。

サロン内は酷い混乱状態に陥ると思います。業務が滞ってしまうのはもちろん、場合によっては倒れた際にお客様を傷つけてしまったり、心因的なストレスやトラウマを植え付けてしまったりするかもしれません。まして、動脈硬化によって引き起こされる疾患は死亡率が高いものも…

そのような事態を招かないためにも定期的な健康診断の場を設けることは非常に大切です。起こりかねないリスクの大きさと天秤にかければ、健康診断に時間を割くくらいはなんてことないはず。しかも、健康管理・健康診断の制度を規定することは厚生労働省が推奨していることです。

それでも、どうしても健康診断を受けるのが難しい場合、自宅やドラッグストアで簡単にセルフチェックができます!いくつかセルフチェックのできるドラッグストアをご紹介しますので、ぜひご検討される方は参考サイトをご覧の上、実施している店舗や曜日を確認してください。もちろんこれら以外でもセルフ血液検査を実施しているところはあります。

※現在新型コロナウイルス感染防止のため、サービスを休止している場合があります。

ウエルシア薬局

・ヘモグロビンA1c測定価格 500円(税込)
・脂質測定価格 500円(税込)
・所要時間:1030分 ※混雑具合によっては結果が出るまで30分以上かかることも有り

参考:ウエルシア薬局株式会社「セルフ血液検査」

ココカラファイン薬局

・血糖値 測定価格 500円(税込)
・ヘモグロビンA1c測定価格 1,000円(税込)
・脂質セット 測定価格 1,000円(税込)
5項目セット 測定価格 2,000円(税込)
・所要時間:図参照

※出血性疾患や薬剤服用により止血が困難な方やアルコール消毒に皮膚が過敏に反応してしまう方は測定を受けられません。

参考:株式会社ココカラファイン ヘルスケア ココカラクラブ「検体測定室」

ツルハドラッグ

・血液検査 測定価格 4,950円(税込)
・所要時間:1520分 ※結果は1014日後に店頭で受け渡し

参考:株式会社ツルハホールディングス「かんたん!血液検査」

近くに実施店舗がなかった、という方やドラッグストアに行く手間すら惜しい場合は、大正製薬の健康チェッカーすもございます。言わずと知れた大手の製薬会社なだけあって、結果を詳しく分析してくれます。また、定期セットがあるのも特徴です。

1回のみお届け 1回分 測定価格 8,360円(税込) ※送料無料
・所要時間:510分 ※結果は3日後に携帯へ速報、または一週間後に郵送(Webでも確認可)

今回ご紹介するセルフチェックは以上です。ただし、あくまでこれは簡易的なものなので、きちんと体の状態を把握したい方は病院で診断を受けることをオススメします。また、何か体に不調を感じた場合には自己判断で処置せずに、専門の医療機関を受診してください。

コレステロール値を正常にするために

先だって述べた通り、美容師の脂質異常症の原因は運動不足、栄養不足、過労に集約されていると言っても過言ではありません。これらの問題を解決するために大切なことをまとめました。少しの運動とちょっとした食事への気遣いでグッと生活習慣が改善されます。長く健康でいるためにも、ぜひ今日から下記のことを意識してみてください。

ウォーキング

「太っていないのになぜ運動?」と思われるかもしれませんが、運動することで血糖値や血圧を下げられるほか、骨を丈夫にし、内臓機能を向上させ、善玉コレステロールを増やすことができるのです!

今回はダイエットや体を鍛えることが目的ではないので、手軽にできる運動として「歩くこと」をオススメします!一日30分をめやすに歩きましょう。いつもより一駅前で降りる、エスカレーターやエレベーターではなく階段を使う、自動車や自転車に乗らない、といった少しの心がけであなたの健康が守れます。スマホなどの機能にも備わっている万歩計を使うと、目標や値が可視化されてモチベーションが上がるのでオススメです!

ちなみに、歩くときは普段よりも早歩きで大股気味に歩くと効果的ですよ。

食事に気をつける

いくら一日の摂取上限量が定められていないからと言って、食事を適当に済ませて良いというわけではありません。また、食べなさすぎるのも体に良くありません。低栄養状態となり、善玉コレステロールが減ってしまいます。食は生活の基盤です。一食一食を大切に、バランス良く栄養を摂りましょう。

摂取したほうが良いもの

食物繊維を多く含む食品

n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む食品

寒天、ひじき、めかぶ、わかめ、昆布
キウイ、バナナ、もも、いちご、レモン、柿
ゴボウ、アボカド、オクラ、モロヘイヤ
春菊、にんにく、かんぴょう、切り干し大根
納豆、きなこ、なめたけ、未精製穀類

青魚(いわし、サバ、サンマ、ブリなど)

シソ油、亜麻仁油、えごま油

くるみ、黒豆、いんげん豆

コレステロールから作られる胆汁酸の体外への排泄を促進し、血中コレステロール値を下げるのが食物繊維です。その他にも整腸作用や血糖値の上昇を抑えるなどの役割があるので、普段から意識して食物繊維を摂るようにしてください。

厚生労働省が推奨しているのは主食からの摂取です。一日のうち一食を玄米ごはん・麦ごはん・胚芽米ごはんのいずれかに置き換えると効率よく食物繊維が摂れます。その他、野菜や海藻、納豆、きのこなどにも多く含まれています。

n-3系多価不飽和脂肪酸はオメガ3脂肪酸とも呼ばれ、人の体内では作ることのできない必須脂肪酸です。不足すると動脈硬化に留まらず、皮膚炎や集中力の低下などを起こします。その一方で、適切に摂取すれば血中の中性脂肪を下げたり、不整脈を予防したり、血液をさらさらにしたりと嬉しい効果が盛りだくさんなので、積極的に摂りましょう。

摂取を控えたほうが良いもの

飽和脂肪酸を多く含む食品

トランス脂肪酸を多く含む食品

コレステロールを多く含む食品

脂身の多い肉や鶏肉の皮
動物性油脂
(バター、牛脂、ラードなど)
生クリーム、チーズ、牛乳

マーガリン
ファットスプレッド
ショートニング
(洋菓子、スナック菓子、揚げ菓子など)

動物性のレバー、臓物類、

卵類、魚の内臓類、魚卵

血液をドロドロにし、血中のコレステロールや中性脂肪を増加させる飽和脂肪酸は、過度に摂取すると動脈硬化や心疾患を引き起こす恐れがあるので控えましょう。

トランス脂肪酸は食品から摂取する必要性がないと考えられている成分であり、日常的に過剰摂取すると心臓病を始めとした生活習慣病に罹るリスクが増大するため、海外では製造が禁止されているところもあります。

前述した通り、健常な人であれば食事からのコレステロールは血中コレステロール値に直接の影響を与えませんが、血中コレステロール値が高い人にとってコレステロールの過剰な摂取は望ましくないです。しかし、コレステロールは卵、肉、魚などの動物性たんぱく質を多く含む食品に含まれているため、完全に食べないというわけにもいきません。過度な制限は禁物です。

ここまで見てきて気づいた方もいるかもしれませんが、摂取を推奨されているものは和食の食材が多く、反対に摂取を制限されているものは洋食の食材が多いです。実際、まだ食の欧米化が進んでいなかった1970年以前の日本人には、動脈硬化に伴う疾患はあまり見受けられなかったそうです。健やかな生活を保つためにも、和食中心の食事を心がけましょう。ただし、和食だと食塩の過剰摂取が心配されるので、減塩調理されたものをオススメします。バランスの良い食事は疲労回復にも効果的です。

サロンワークは体力勝負!健康には人一倍気を遣おう

このコラムを閲覧してくださった方の多くは、健康状態が気になっている方だと思います。繰り返しになりますが、見た目や症状に現れないからといって高を括り、そのまま放置しておくのは危険です。忙しくても自分の健康管理を怠るのだけはやめましょう。

サロンでの仕事はハードワークになることが多いです。仕事をしっかりこなすためにも、体を健康に保つことは必須!自分の体を守り、ケアできるのは自分だけです。こまめに自分の体を労わってあげてください。あなたがいつまでも健康で活躍できるよう、ビューティーパークカレッジはサロンの健康経営を応援しています!

参考:日本動脈硬化学会
参考:ビューティーパークカレッジ「美容師に意外と多い、細いのにコレステロール値が高い?!」