美容業界は技術さえあれば勉強は関係ないと思われがちですが、実際は覚えなければいけないことがたくさん。専門学校を卒業してようやく勉強から解放されたかと思えば、最新の技術やトレンド、人間の体に関する知識や法律関係など、次から次へと覚えるべきことが出てきます。そこで、少しでも効率よく覚えたいという方のために、都内大手の塾で講師経験のある筆者が、集中力を高めるコツと学んだことが身につく勉強法をお教えします!

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集中力の限界と集中できない原因

そもそも集中力は長時間続かないということをご存知でしょうか?精神科医の樺沢紫苑氏によると、集中の度合いによって15分、45分、90分と持続時間が変わるといいます。集中力が高いほど持続時間は短く、15分程度しか続かないようです。そして、集中の度合いがそこまで高くなくても最大で90分しか持続できず、これは訓練などによって延ばすことはできない数値だといいます。

ですから、集中して効率的に作業や勉強をしたいのであれば、まずこの15分・45分・90分の法則をもとに、時間を意識しながら行うことが大切です。始める前に時間を決め、適度に休憩を挟むようにしましょう。

ただし、この時間中にきちんと集中力を発揮するためには、集中できる環境を整えることも重要になります。たとえば、集中できない原因としてスマホやテレビなどの誘惑に負ける、周りの音がうるさい、暑さや寒さによる不快感などが挙げられます。これらのマイナス要因を取り除き、集中しやすい状況を作ることが大切です。その具体的な方法について、次のパラグラフで説明していきます。

参考:YouTube 精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル「15-45-90の法則 集中力持続時間の秘密」(3:19)

集中しやすい環境をつくる、たった5つのポイント

日常にはさまざまな誘惑やイライラ要因が存在します。それらをできるだけ寄せ付けず、効率よく作業をするにはどうしたら良いのでしょうか。集中しやすい環境づくりに必要なことを5つピックアップしました。今どれだけ集中する環境が整っているのか、あなたの周囲と比較しながら読んでみてください。

①整然とした場所

視覚から余計な情報が入ってくると、目の前のことに集中するのは難しいです。気が散らないようにするためにも、机の上を始めとした視界に入る範囲にスマホやテレビ、漫画などは置かないようにしましょう。また、周りが片付いていないだけでも無意識のうちにそちらへ気を取られてしまいます。そうすると集中が妨げられるだけでなく、脳が情報を処理する量も制限されてしまい、作業効率も低下してしまうのです。

ただし、一度片付け始めると収拾がつかなくなることが多々あるので、大きめの布やカーテンを活用して部屋の物に覆いをかけることをおすすめします。

②程よい雑音

集中力は周りの音にも左右されます。一般的には静かな方が集中できるとされていますが、あまりにも音がない状態だと逆効果に……。よくカフェで仕事や勉強をしている人を見かけるのは、ある程度雑音があった方が集中できるからなのです。中には無音状態にしないために、作業用BGMのプレイリストを作って音楽を流している人がよくいますが、その場合は何を流すのかが非常に重要になります。

あまり頭を働かせなくても黙々とこなせる単純作業であれば、好きな音楽をかけることで作業効率が上がる人もいます。しかし、よく考えて行う必要がある場合には歌のあるなしやジャンルに関わらず、音楽そのものに意識が持って行かれてしまうため、音楽を聴くことは好ましくありません。

集中を高めるのに効果があるといわれているのは雨音や波の音、風の音や鳥の声などの自然音です。さまざまな自然音を収録した音源がダウンロードサイトやYouTubeなどにあるので、自分に合う音を探してみてはいかがでしょうか。

参考:新R25「「集中力を上げる効果はない」とわかっていても、脳研究者が仕事中にBGMをかける理由」

③デスクワークをする場所では他のことをしない

脳にはある特定の行為と場所をセットで認識する働きがあります。たとえば、寝つきの良い人はベッドでは寝る以外のことをしません。布団の中でスマホをいじったり読書をしたりすると、脳はベッドを寝る場所と認識しなくなり、なかなか寝られなくなるからです。同じことが作業スペースでも言えます。

たとえば事務作業をする際に、集中して仕事に取りかかりたいのであれば、施術スペースとは別の場所で行うことを習慣化すると、スムーズに進めることができるのです。そして、その場所では食事などの別のことをしてはいけません。脳に「ここは○○をする場所」と認識させるためにも、場所を決めることは非常に重要なことです。

参考:フォレスト出版『仕事ができる人の脳にいい時間の使い方』菅原洋平(著)

④集中するのに適切な室温

寒い場所で思うように仕事が捗らなかったり、暑い場所では何もやる気が起きなかったりしませんか?周囲の温度は集中力に大きな影響を与えます。実際、世界屈指の大学機関であるハーバード大学で行われた研究で、暑い中で作業をした場合は認知能力が13.313.4%も低下することが明らかになりました。

また、同じくアメリカの名門校、コーネル大学の研究によると、寒い中で作業をした場合はミスが多発し、時間などのコストが10%増加することが分かっています。一方で、室温を25℃に設定した屋内においてはミスが44%も減少し、生産性は150%にまでアップしたのです。

温度感覚には個人差がありますが、少し涼しいと思うくらいが集中するのにはちょうど良いということでしょう。

参考:HARVARD T.H. CHAN「Extreme heat linked with reduced cognitive performance among young adults in non-air-conditioned buildings」
参考:Cornell University「Study links warm offices to fewer typing errors and higher productivity」

⑤「誰かに見られる」状況で作業する

学生の頃、一人で勉強するよりも友達と一緒に勉強したり、学校や塾など人の目のあるところで勉強したりする方が集中できたという経験を持つ方は多いのではないでしょうか。これには心理学で言う「ホーソン効果」が関係しています。ホーソン効果とは、人に見られることで相手の期待に応えようとし、生産性が上がることです。

これを上手く利用すれば、普段のサロンワークやセミナーなどの勉強会にも活かせます。一人ではなかなか集中できない、作業が捗らないという方は、人の目を意識して取り組むと集中しやすくなり、効率よく作業することができます。

参考:UX TIMES「ホーソン効果」

作業のお供にしたい!集中力アップに役立つ食べ物・飲み物

集中するということは脳が活発に働くということです。つまり、集中するためには脳にエネルギーや栄養を補給しなければいけません。では、どのような食べ物や飲み物から摂取するのが良いのでしょうか。ここでは食事面から集中力を高める方法をお伝えします。

糖質オフ食品

脳のエネルギー源となる炭水化物やブドウ糖。生きていくうえでは欠かせない栄養素ですが、一度にたくさん食べると体内の血糖値が急上昇と急降下を繰り返し、眠くなったり頭がぼーっとしたりと逆に脳の機能を低下させてしまいます。そのため、白砂糖や果糖がたっぷり含まれる菓子類や、糖質が高い白米などの食べ過ぎには注意が必要です。

ごはんを食べた後は眠くなりやすいという方は、白米から玄米や雑穀米などに変えたり、甘いものは少量に抑えたりすると良いでしょう。

青魚(DHA

集中力を司るのは脳の前頭前野という部位です。前頭前野の機能が低下するとやる気がなくなり、物事に無関心になってしまいます。前頭前野の働きが鈍る原因は主に加齢やストレスです。どちらもなかなか避けがたいものですよね……。ですが、脳の機能を維持するのに有効な栄養素があります。それがDHA(ドコサヘキサエン酸)です。

これは人間の体内では生成することのできない必須脂肪酸の一つで、主に青魚に多く含まれています。昔から「魚を食べると頭が良くなる」といわれているのは、このDHAの働きによるものだったのです。ただし、直前に食べたからといってすぐに効果が出るわけではありません。長期的に摂取することが大事なので、普段から意識的にサバやサンマなどの青魚を食べるようにしましょう。

参考:産経新聞「【脳を知る】「ストレスと脳」メンタルヘルスに青魚や野菜」(2020.6.17)

卵黄にはレシチンという成分が含まれています。これには、脳の機能を高める効果があり、集中力だけでなく記憶力向上にも影響しています。アルツハイマー病や認知症を予防する効果も期待されるほど、脳の機能向上に役立つ成分なので、普段の食事に積極的に取り入れると良いですね。

しかも卵はたんぱく質も豊富に含む食材です。「ドーパミン」という言葉を耳にしたことがありませんか?これはやる気や集中力を引き出す神経伝達物質で、主にたんぱく質を材料として作られています。そしてたんぱく質を構成するのはアミノ酸という成分です。

卵には体内で生成することのできない必須アミノ酸9種類が、すべてバランスよく含まれています。質、量ともに優れた、まさにたんぱく質の優等生なのです!良質なたんぱく質を日常的に摂取し、ドーパミンの分泌量を増やしましょう。

参考:えいようJoin「効率よく作業するために必要な集中力を高める食べ物を徹底解説!」
参考:HOLOS-BRAINS「やる気と集中力の素、ドーパミンをたくさん出せる人とは?」
参考:日本養鶏協会「たまごの知識」

カフェイン

コーヒーやお茶などに含まれるカフェインには、ご存じの通り覚醒作用があるので集中力を高めるのに向いています。実際、朝の眠気覚ましとしてコーヒーを飲む方や、残業のお供にエナジードリンクを飲む方は多いです。

しかし、カフェインは過剰摂取によってめまいや震え、吐き気、下痢などの健康被害を起こす恐れがあります。一日あたり、コーヒーであれば3杯程度(1杯200ml)、エナジードリンクはカフェインの含有量にもよりますが2本まで(1150~355ml)を目安にしてください。なお、この数字は成人の摂取目安量になります。子どもの場合は大人の4分の1が上限量なので注意しましょう。「薬も過ぎれば毒となる」ということわざもあります。何事も適量を守ることが大切です。

参考:厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」

効率よく仕事や勉強をするために取り入れたい手法5

さて、集中するために必要なことは分かったので、ここからは作業効率を高めるための方法についてご紹介していきます。特別な道具や訓練はいりません。今日からでもすぐに実践できることばかりをまとめたので、いいなと思ったものはぜひ試してみてください。

①スタンディングワーク

アメリカやイギリス、オーストラリアなどの企業で主流になりつつあるのが、立ちながら仕事をする「スタンディングワーク」です。座っている時間が長いと生活習慣病を始め、さまざまな健康リスクが出てきます。また、スタンディングワークを実践した人々からは体調の改善だけでなく、作業効率が上がったという報告もあります。

美容サロンで働くスタッフの多くは立ち仕事が主でしょうから、必要な時以外は座っていても良いと思いますが、事務作業中や勉強中などに疲れを感じ始めたり、飽きてきたりしたら、たまには気分転換も兼ねて立って作業をするのも良いと思います。

参考:DIAMOND Online「グーグルもフェイスブックも導入、立って働くほうが疲れず生産性も上がる理由」(2017.10.20)

②始める前に時間を決める

その日にこなす仕事や勉強はあらかじめ決めている方がほとんどだと思いますが、それぞれにかける時間まで決めている方はどれだけいるでしょうか。どれくらいの時間があれば終わらせることができるのかを逆算し、それぞれに割く時間を決めてから取りかかりましょう。

というのも、時間設定をすることで期限が明確になり、締め切りが近づくにつれてモチベーションや集中力が増すからです。これをデッドライン効果と言います。時間を決める際には、想定よりも若干短い時間で設定すると生産性アップに繋がります。期限を気持ち短めに設定するのは、「まだ余裕があるから大丈夫」と怠けないようにするためです。

たとえば子どもの頃、夏休みが終わる直前に慌てて宿題に手を付けたという経験はありませんか?その時は普段よりもずっと速いスピードで宿題をこなしていたと思います。これもデッドライン効果によるものですが、夏休みの場合は期間が非常に長いため、後半になるまでゴロゴロしたり遊んだりとのんびり過ごしてしまいがちです。そのため、のんびり期間をできるだけ短くして(あるいはなくして)効率よく進めるためにも、締め切りは少し前倒しにすることをおすすめします。

③簡単なものから手を付ける

初めから難しい仕事や苦手な課題をしようとすると、どうしてもやる気が削がれてしまいます。すると、当然のことながら作業効率は落ちますし、自主的な勉強などの場合は諦めて「やらない」という選択をしかねません。そこで大切なのが、やりやすいものから始めること。簡単な作業や好きなことであれば自然と向き合うことができます。

また、何十分、何時間とかかるものに取りかかるのは心理的に抵抗があるので、「まずは5分だけやってみよう」というスタンスで臨むと始めやすいです。

「簡単なものから5分だけ」と思って始めると、いつの間にか長い時間が経っていたり、難しいものにも抵抗なく手を付けたりできます。

④「キリが良いところまで」はNG

時間はきちんと守ってこそ、時間設定をした意味があります。ですから、途中だったとしても時間になったら潔く終わりにすることが大切です。とはいえ「あともう少しだけ」、「ひと段落つくまで」と思う気持ちも分かります。勢いに乗っている時、順調に進んでいる時ほどそう思いますよね。ですから、その気持ちを利用するのです!

中途半端なところで終わらせればモヤモヤ、うずうずして続きがやりたくなり、次に始める時のモチベーションも高いまま維持できます。印象にも残りやすいので、どんな内容だったかも詳細に記憶していられることが多いです。これをツァイガルニク効果と言います。

ドラマや漫画などでも、シリーズ物は引きが上手いですよね。ツァイガルニク効果を利用し、あえてキリの悪いところで区切ることで「早く観たい!」、「続きが気になる!」という心理にさせています。だからこそ視聴者や読者は時間が空いても離れないですし、前回の内容も覚えていられるというわけです。

そのため、仕事や勉強をする時も「キリが良いところまで」と時間を延ばしてまでやるよりは、スパッと終わりにして次に持ち越したほうが結果的に効率よく進められるのです。これは最初に述べた154590分の法則に沿って休憩を入れる時にも同じことが言えます。

⑤人に教える

何かを覚えるうえで大切なのはインプット(知識を詰め込む)したことをアウトプット(学んだことを発信・実践)することです。たとえば、小学校で漢字を覚える時にはただ形を眺めるだけでなく、何回も書いて練習しましたよね。それと同じように、知識はどんどん外に出していくことで定着しやすくなります。

そして、アウトプットの方法として効果的なのが教えることです。物事を教えるには、自分自身がそのことについてよく理解している必要があります。したがって、人に教えようと思って学べば「何となく」理解してスルーしていたところもきちんと身を入れて覚えられますし、教えていくうちに自分の得意なことや苦手なことが見えてきます。また、教えるという経験自体が印象深いものになるので、長い間記憶に残りやすいです。

部下や後輩に教える機会があまりなくても、家族や友人に聞き手となってもらうだけで効果はあるので、記憶力を上げたい方や効率よく覚えたい方は試してみてください。

集中して取り組むことで時間を節約

今回は集中力と効率アップについてお伝えしました。これらのノウハウは、日常のあらゆる場面でも使えるものです。今後の生活の中で上手く活用し、時間を無駄なく使えるスマートな社会人になりましょう。サロンのスタッフは忙しく、自分の時間が圧迫されがちです。だからこそ、効率よく作業して時間を短縮することが大切になります。

そうして節約した時間は趣味やスキルアップ、家族や友人と過ごすなど、有意義に使えると良いですね。ビューティーパークカレッジは、サロンで働くすべての人が公私ともに充実した生活を送れるよう応援しています。